草枕の冒頭は諦めの名言?智・情・意地の意味から山道と雨の場面へ、第一章の最後までたどって、語り手の考え方の変化を一緒に読もうね!

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正しいことを言っても、話がうまく進まない。相手を気遣ったら、自分の希望を出す場所がなくなる。じゃあ、ここは譲らないぞ、と踏ん張ったら、それもそれでしんどい。

こんな仮の場面を思い浮かべると、夏目漱石『草枕』の冒頭に、ちょっと立ち止まりたくなるよね。

「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」

うわ、どこから行っても難しいじゃん……。

でも、ここで本を閉じるのは、まだ早いんだよ。続く文章では、住みにくさから詩や絵の話へ進む。その考えを抱えた語り手が、山の景色を眺め、最後には雨に濡れる。

『草枕』の冒頭は、人付き合いを諦めるための結論としてだけ読むより、語り手がどう見ようとして、実際には何にぶつかるのかまで追うと面白い。

今回は、青空文庫の本文をもとに第1章の終わりまで読んでいきます。物語に書かれた出来事と、この文章から考える読み方は分けて話すね。引用は夏目漱石の小説からのものです。市販の読書候補には新潮文庫『草枕』を紹介しますが、本文の確認に使った青空文庫は筑摩書房の別の底本です。

目次

智・情・意地は、どれか一つを選べばうまくいく話じゃない

最初の一文は、山路を登りながら考えた、と始まります。

ここ、場所を飛ばさないでみて。机に向かって教訓を書いている場面ではなく、歩いている人の頭の中なんだね。新潮社の紹介でも、思索しながら山路を登る青年画家として説明されています。

その人が、智、情、意地を順に並べる。智は物事を理知で考える側、情は人の感情へ寄っていく側、意地は自分の思いを曲げずに通そうとする側、と捉えると、この三つの並びを読み始めやすいよ。

これは現代語で近づくための説明で、本文の一語をいつでも一つの意味へ固定するものではありません。まずは、何を頼りに進もうとしているのかと、その後に何が起こるのかをセットで見る。

智の後には角が立つ。情の後には流される。意地の後には窮屈だ。

全部、うまくいった!には、ならないのね。

例えば友人との予定を決める、という説明用の場面で考えてみよう。移動の効率だけで提案すれば、相手の行きたい場所を置き去りにするかもしれない。相手の希望を全部受ければ、自分の都合を言えなくなるかもしれない。自分の案だけを押し通せば、相談する余地が狭くなる。

ただ、この仮の例を小説の正式な解答にしないでね。『草枕』が旅行の相談術を教えているわけではないし、知性や思いやりが悪いという話にまとめるのも急ぎすぎです。

むしろ、どれか一つを取り出して、これさえあれば大丈夫、と言い切れない。その行き詰まりが、冒頭のリズムから見えてくる。

読んでいて自分の場面を思い出したら、何を選んだかだけでなく、何を失いそうになったのかまで書いてみるといいよ。合理的だった、優しかった、強かった、という人物の採点よりも、その時に両立しにくかったものが見えるから。

もう一つ、語り手と作者を区別しておこう。

作品を書いたのは夏目漱石。でも、この山道で考えている人の言葉を、そのまま漱石本人の人生の最終回答にすることはできません。第1章には三十の今日という語りも出てくるけれど、それはまず小説の語り手についての記述として読みたいところ。

名言の横へ作者名を添えるのは分かりやすい。でも、その言葉を誰が、どんな場面で言っているのかを見たら、短い引用の輪郭がもう少しはっきりするよ。

紙の本で前後へ戻りながら読むなら、楽天市場で新潮文庫『草枕』を確認する。確認できた掲載には中古品もあります。同じ作品名でも出版社や版が違うことがあるので、購入時はISBNも見てね。

住みにくい、その続きに詩と絵が出てくる。ここを読もう!

冒頭の次に、語り手は別の場所へ引っ越したくなる、と考えます。ところが、どこへ越しても住みにくいと悟る時に、詩が生まれ、絵ができる、と続くんだよ。

えっ。そこで芸術の話になるの?

そう。この続きがあるから、住みにくいの一文だけを読んだ時とは、文章の向かう先が変わります。

人の世を作っているのはただの人であり、人が作る世から逃げるために越していける国はあるのか、と語り手は問いを進める。そのうえで、住みにくい場所を少しでも住みよくする働きとして、詩人や画家を語ります。

世間は嫌だ、だから全部終わり、ではない。住みにくさを知ったその場所で、どう景色を受け取り直せるのかへ考えが動いている。

ここは、その流れとして読むと面白いよ。

しかも語り手は、必ず紙に書いたり、絵の具で描いたりしなければならない、とはしていません。描かなくても、そのように見ることができればよい、と話を広げていく。第1章に出てくる芸術の話は、完成した作品を作る職業の話だけではないんだね。

だからといって、何でも美しく見れば現実の問題が解決する、と言っていることにしないようにしよう。これは小説の中の芸術観で、治療の方法や仕事の問題を片付ける手順を説明したものではありません。

読み方の小さな工夫としては、冒頭と、その次の段落を並べてみてほしい。

一つ目には、角が立つ、流される、窮屈だ。進むたびに別の困りごとが現れる。

次の段落には、越す、悟る、生まれる、できる。行き場を求める考えが、新しいものの発生へ移っていく。

同じ住みにくさを話していても、動詞が変わっているんだよ。ここを見つけたら、一文の意味だけでなく、文章がどこへ進んだかを追える。

難しい言葉が続く箇所では、全部を一度に訳し切ろうとしなくて大丈夫。どの言葉も放っておく、という意味ではなく、まず前後の方向をつかむ。誰が何に困り、それをどんな別の見方へ動かそうとしているかを拾ってから、引っかかった語を調べて戻る。

最初から一行ごとに立ち止まって疲れたなら、最初のまとまりでは、住みにくさから芸術へ話が移ったところまで読めた、と印を付けておこう。その先で、語り手が実際に何を見るのかを読む時の目印になります。

名言だけをきれいに残すより、その言葉の次に何が生まれたのかまで持っておく。『草枕』では、その数段落がちゃんと大事なんだね。

冒頭の続きへ戻る読書候補は、楽天市場の『草枕』新潮文庫の検索結果で確認できます。この記事で扱う芸術観の説明は、青空文庫の第1章から読んだもので、購入候補の解説文章を読了したという紹介ではありません。

考え込む画家が石を踏み損ねる。景色を見る目と体の動きを一緒に追って

語り手は、喜びが深い時には憂いも深く、楽しみが大きければ苦しみも大きい、と考えを続けます。お金や恋、食べることなどを例に、よい部分だけを切り離そうとしても難しい、と話を広げていく。

そこへ、右足が石の端を踏み損ねる。

あ、足元!!

考えが高いところまで登っていっても、歩いている体には石があるんだね。左足が前へ出て、腰は岩へ下りる。肩の絵の具箱が動いたものの、幸い何事もなかった、と本文は続きます。

語り手の議論だけを抜き出したら、この動きがなくなる。でも、第1章の面白さは、考えている人が山道を歩いている、という両方があるところ。言葉が現実から完全に離れて浮いているわけじゃない。

その後の山道も、歩きやすく整った散歩道として描かれてはいません。土を平らにしても石や岩は残る。相手が道を譲らないなら、乗り越すか回らなければならない、と足元の難しさが語られます。

この岩を、必ず人間関係の象徴だ、と決める必要はないよ。本文にはまず、歩きづらい道がある。その描写と考え事が隣り合っていることを見たうえで、自分がどう関係を感じたかは感想として分けておこう。

やがて、語り手は雲雀の声を聞きます。ただ、姿は見えない。そこから、空へ登っていく鳥の姿を思い浮かべる。

ここも細かいけれど大切。小説の中で見えたものと、想像したものを一緒にしないで読むと、文章がどう景色を増やしているか分かるんです。

聞こえたのは声。見下ろした先には菜の花。そこへ、上がる鳥、落ちる鳥、すれ違う鳥の想像が重なる。

こんなふうに、見えるものだけを順番に説明していないんだね。目の前の景色と、考える人の動きが、同じ文章の中へ入ってくる。

この部分を読む時は、ノートを用意するなら、見たもの、聞いたもの、想像したもの、の三つに軽く分けてみてもいいよ。ノートを買い足す必要はなく、手元の紙や画面のメモで十分。これはこの記事の読書案で、作品の公式な読み方ではありません。

雲雀が雲の中で死ぬという想像を、鳥の生態の説明として受け取らないことも、その区別につながります。実在の鳥の習性を解説する場面ではなく、語り手がその声をどんなふうに受け取ったかを読む場所だから。

さらに、詩人の幸福についても、語り手はまっすぐ一つの答えに進むわけではありません。雲雀を聞いて詩を思い出し、詩人は人より苦労性なのかもしれない、と考え直す。いい景色を見たら全部が解決した、という単純な進み方にしないのが、この章の読みどころです。

立派な考えをした。つまずいた。景色に惹かれた。また考えた。その行き来を読みたいね。

山道の描写を前後へ戻って確かめるなら、楽天市場で夏目漱石『草枕』新潮文庫を探す。本文の引用箇所は章で案内しています。版で頁が変わるため、未確認のページ番号は付けていません。

非人情は、人を嫌って捨てること?第1章には続けられなさも書かれているよ

語り手は、景色を絵や詩として見ている間には、自分の利害に直接結び付けず楽しめる、と考えます。土地をもらって開拓しようとか、鉄道を通して稼ごうとか考えず、景色を景色として眺めている、と説明するんだね。

そこから、しばらく非人情の天地へ入ってみたい、という願いが出てくる。

非人情って、冷たい人になることなの?と引っかかったら、その後の文章も読もう。

語り手は、自分も人間の一人なのだから、それが長く続くわけにはいかない、と認めています。山の中で野宿するほどではなく、今夜の宿として那古井の温泉場も挙げる。

つまり、この章では人間との暮らしを永遠に捨てる宣言をしていません。作品の那古井という場所を、そのまま現在予約できる宿の案内にすることもできないので、ここでは物語の行き先として読んでね。

それでも語り手は、旅で出会う人を絵の中の人物のように見ればどうだろう、と考えます。相手の心理の奥を探ったり、人間同士の葛藤を調べたりするより、離れた場所から動きを眺めようとする。

一見、これで自分を守れるようにも見える。でも、その距離の取り方を、現実の相手への万能の接し方に置き換えるのは別の話です。小説の語り手が試している見方として、どこまでいくのかを追いたい。

読書中の疑問として、二つを分けると考えやすいよ。

一つは、人と関わることを全部やめたいのか。もう一つは、一時的に利害から離れた見方をしたいのか。

本文には、しばらく、少しの間、という方向の言葉が出てきます。そこを見ると、距離を取る願いの長さが分かる。冷たい性格だと人物を一言で決める前に、何からどのくらい離れようとしているのかを確認できるね。

ところが、この考えを固めた時、空が怪しくなる。雨が降ってくるんです。

わあ、ここで天気が変わるのか。

語り手は、雨や山が見え隠れする景色を描きながら進みます。でも雨具の用意がないので、急がなくてはならない。休む場所を尋ね、もう少し先に茶屋があると教えられる。

見物するつもりだった人が、休む場所を人に聞いている。その切り替わりが、文章に出てくるんだよ。人の動きを絵として遠くから見たいと言っていても、濡れる自分には、場所を教えてくれる人の返答が必要になる。

だから、第1章の非人情を読むなら、言葉の定義だけで止めず、その願いが場面の中でどう扱われるかまで見てほしい。考えの説明の後に、ちゃんと出来事が来る。その出来事を受けて読むと、きっぱりした一語の中に、揺れる部分も見えてきます。

非人情という言葉の前後を読む一冊として、楽天市場で『草枕』新潮文庫の掲載を確認する。同じ作品の紙の本と電子版、違う出版社の版が混ざる場合は、希望する形式とISBNを合わせて選んでね。

最後は雨に濡れる体へ戻る。名言を読んだ感想も、そこで言い直してみよう

第1章の終盤、羽織は濡れ、水は肌着へしみていきます。その水が体の温度で生暖かく感じられ、語り手は気持ちが悪いので急ぐ。

ここまで来たら、雨の景色をきれいだね、と眺めるだけでは済まない。

語り手は、自分を他人の姿として見れば、詩にも絵にもなると考える。でも、降る雨のつらさや足の疲れを気にした瞬間には、その見方から離れる、と話します。

美しい風景の中にいる自分を見るつもりでも、実際に歩く自分の体は濡れて疲れているんだね。

そして、章の最後は「非人情がちと強過ぎたようだ。」となります。

あっ、そこで言い直すんだ!

最初に考えたことを、最後まで一ミリも動かさず言い通す章ではなかった。非人情への願いを語った人が、その強さを少し引き戻す。この最後の一文を読んでから冒頭へ戻ると、語り手の声の聞こえ方も変わるよ。

ここでは、この変化を、見る人と歩く人が同じ体にいることが表れた場面として読んでいます。これは本記事の読みで、作者の意図を一つに確定する説明ではありません。

冒頭だけなら、人の世は難しいという実感を持ち帰れる。第1章の最後までなら、その難しさから離れて眺めようとする試みと、離れ切れない体の存在まで一緒に持ち帰れる。

どちらも同じ作品から受け取ることだけれど、読んだ範囲が違うと、感想の厚みも変わるんだね。

読み終わったら、最初の感想をもう一度見てみよう。人付き合いはどうしても難しい、だけで書いていたなら、その後に、語り手は詩や絵へ見方を動かした、でも最後には雨に濡れて考えを引き戻した、と短く足してみる。

難しい学説の名前を使わなくても、本文で起こった変化を言えれば、自分の読んだことを伝えられるよ。

友人へ勧める時も、この名言が正しいから読んで、だけで終わらせず、考え込んでいた人がつまずいて、景色を見て、最後は雨に困る、その行き来を読んでみて、と話せる。これは実際の会話の記録ではなく、読書の紹介の仕方としての提案です。

作品の確認には青空文庫『草枕』本文と図書カードを使いました。図書カードでは初出を1906年9月の『新小説』としています。新潮文庫の書誌は新潮社の『草枕』紹介で、夏目漱石著、256ページ、ISBN9784101010090を確認しています。

市販本を手元に置いて読みたいなら、楽天市場で新潮文庫『草枕』を選ぶ。中古掲載の状態、版や付属物、送料は商品ページで確認してね。青空文庫の底本と、この新潮文庫の頁や注釈が同じとはしていません。

まずは、冒頭の後を一段落。そして第1章の最後まで。

住みにくい、で止まったと思っていた話が、ちゃんと動いている。語り手が見ようとした景色と、最後に目を落とした足元。その両方を読みにいこう。

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この記事を書いた人

demoday編集室のアバター demoday編集室 DreamBeliever

人間関係や日々の気持ちを見つめ直すための言葉と考え方を取り上げる編集室です。言葉を引用するときは、出典を確かめて紹介します。

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