相談されたときの聞き方|助言・確認・手伝いの前に相手の希望を聞く

「ちょっと聞いてほしい」と、友人から連絡が来た。話を聞き始めたら、解決方法が思い浮かんできた。でも、その案をすぐ伝えてよいのか、今日は聞くだけがよいのか。返事を考えながら、途中で迷うことはありませんか。

こういう場面で、気の利いた名言を探す必要はありません。先に確かめたいのは、相手が今、何を求めて話しているかです。

ただ聞いてほしいのか、一緒に状況を整理したいのか、具体的な案を相談したいのか。本人もまだ決めていない場合があります。最初から二択で答えさせるより、少し聞いた後で、今の希望を確かめてもよいんです。

この記事では、身近な人から日常の相談を受けたときの返し方を考えます。会話や出来事はすべて説明用の仮の例です。聞き方だけで病気、暴力、職場の構造的な問題を解決できるとする内容でも、専門的なカウンセリングの手順でもありません。

※本記事には広告・アフィリエイトリンクが含まれます。

目次

話の入口では、内容より先に時間と場所を確かめる

『聞く技術 聞いてもらう技術』を楽天で確認する

筑摩書房の書籍紹介では、東畑開人の本として、聞くことと聞いてもらうことの両方を扱うと案内されています。聞き手の立場だけで会話を考えないための読書候補です。本の全文を読了した書評ではなく、以下の場面例も書籍から転載したものではありません。

「聞ける」と「今すぐ十分に聞ける」は違う

出先で電話を受けたとします。相手は話し始められても、こちらは電車の乗り換え中で、周囲には人がいる。そんなときに、「大丈夫、何でも話して」と、実際にはできない約束を広げなくて大丈夫です。

仮の返事なら、「いま駅にいるので、落ち着いて聞ける場所ではないんだ。帰ってから電話してもよい?」です。話を聞きたくないという評価ではなく、今の条件を伝えます。

「あとで」と言う場合は、何時ごろに連絡できるかも相談しましょう。帰宅時刻が読めないなら、「家に着いたら、話せる時間を連絡する」と、約束できるところまでにします。相手が今すぐ話したいなら、こちらの都合まで待てるとは限りません。その希望も確かめてください。

厚生労働省の「こころの耳」は、部下の話を聴く際に時間と場所を整え、周囲へ内容が聞こえる場所を避けることを案内しています。「傾聴のポイント」は職場の支援に関する資料ですが、ここではまず、相談内容を話せる条件があるかを考える手掛かりにしています。

会うなら、相手が選べる範囲を残す

話を聞く場所を決めるときは、「いつもの店でいいよね」と、個人的な相談に向くかまで決めつけないようにします。知り合いに会いそう、隣の席へ聞こえそう、移動が大変。気になる条件は相手によって違います。

仮に二つの候補を出すなら、「電話と、静かなところで会うのと、どちらが話しやすい?」と聞けます。ただし、聞き方の技術を試すために、相手へ無理に会ってもらう必要はありません。

自分の家へ呼ぶ場合も、家族がいるか、途中で別の用事が入るかを伝えます。二人で話せると思って来たのに、実際は人の出入りが多い。そんな条件の食い違いを、先に減らすためです。

メッセージでよいという返事なら、その手段で進めましょう。通話のほうが真剣、手書きのほうが気持ちが伝わる、と連絡手段を順位付けしないでください。相手が今使える方法も、相談の条件の一部です。

話せる時間に終わりがあるなら、始める前に伝える

三十分後に家の用事があるなら、そのことを最初に伝えます。「三十分しか聞けないから、短くまとめて」と急がせる代わりに、「今日は三十分ほどなら話せる。続きが必要なら別の日も相談しよう」と、こちらの範囲を示す言い方が考えられます。

まだ話の内容が分からない時点で、全部を解決する約束まではしないこと。聞ける時間を伝えることと、話の重要さを小さく扱うことは別です。

もちろん、命や身の安全に関わる切迫した状況を、日常の時間調整だけで扱ってはいけません。その場合は、身近な会話やこの記事の手順だけで抱えず、緊急の支援につなぐ必要があります。

返事を急がず、相手の話と自分の想像を分ける

『LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる』を楽天で確認する

日経BOOKプラスの紹介で、ケイト・マーフィ著、篠田真貴子監訳、松丸さとみ訳と確認できる本です。聞くことをテーマにした読書候補として紹介します。書名を、読めば能力や人間関係が必ず変わるという約束へ置き換えないでください。

聞き始めに「つまり」を急がない

仮に、友人が「集まりの幹事を頼まれて、連絡が多くて」と話したとします。そこで「つまり、幹事をやめたいんだね」とまとめるのは、少し待ってください。

本人が困っているのは、幹事をすること自体ではなく、人数を締め切りまでに確定できないことかもしれません。あるいは、お金を預かる役割も任されそうで、どう確認するかを相談したいのかもしれません。

ここで挙げたのは、理由を当てるための候補ではありません。同じ入口の一文だけでは、困っている対象までは分からない、という例です。

話が続いている間は、その先を聞く。一段落したら、「連絡が多い中で、いま一番困っているのはどの部分?」と、本人が具体化できる問いを置きます。全部の事情を一度に説明してもらおうとせず、今の話の中心を確かめましょう。

分かったつもりになったところで、短く確認する

先ほどの「こころの耳」の資料では、最後まで聴いた後で、理解したことを伝えて確認する流れが示されています。ここでは、相手の話を自分の結論へ変えないための確認として使います。

仮の言い方は、「参加人数が決まらず、店への連絡をどうするか困っている、という理解で合ってる?」です。合っていなければ直してもらえる形にしてください。

そこで「いや、人数より、お金を立て替える話が出ているのが気になる」と返ってきたら、人数の話を詳しく聞き続けるより、お金の話へ戻ります。こちらの整理を完成させることが、会話の目的ではありません。

相手の気持ちを言葉にするときも、本人が言っていない強さを足さないようにします。「困っている」を「もう限界なんだね」へ変えると、話した内容を超えてしまうことがあります。本人の言葉をもとに、分からないところを聞き直してください。

メッセージでは、返せる時刻を伝えておく

文章で相談が届いた場合、すぐに全体へ返事ができないこともあります。「読んだので、夕方にもう一度落ち着いて返す」と伝えるなら、本当に返せる見込みの時刻にしてください。見込みが立たなければ、今日は詳しく返せないと伝える選択もあります。

相手の返事が短くても、それだけで「機嫌を悪くした」「納得した」と決めないようにします。文面から分からないところは、「この話を続けてもよい?」と確認できます。確認の連絡を何度も重ねる前に、相手が返信できる状況かも考えてください。

自分の似た経験は、聞く代わりにしない

同じような幹事役をしたことがあっても、相手の集まりは別のものです。参加人数、関係、予算、引き受けた範囲が違うかもしれません。

「自分のときはこうした」と話したくなったら、先にその話が必要かを確かめる方法があります。「似た場面の例を一つ話してもよい?」と聞き、不要なら今の話に戻る。経験があることと、今回の条件に適用できることは分けましょう。

説明する場合は、成功だけでなく違う条件も添えます。仮に自分の経験を話すなら、それは実際にあった内容に限ります。この記事の例を、読者自身の体験として使う必要はありません。

また、相手が話している途中で「私のほうが大変だった」と比較を始めると、いま受けた相談の対象が入れ替わります。別の話をしたいなら、相手の話が一段落してから、あらためて自分の話として始めればよいんです。

助言をする前に、欲しいものと手伝える範囲を聞く

『LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる』を楽天で確認する

助言することだけを「役に立つ会話」と考えていたら、聞くことを扱う本の内容紹介も検討材料になります。ただし、読書と、具体的な困りごとを担当者や専門家へ相談することは代わり合うものではありません。

「聞くだけか、解決か」の二択へ閉じ込めない

少し話を聞いた後なら、「今日は話を聞くほうがよい? それとも、一緒にできることを考えようか」と聞けます。でも、相手がすぐに選べなくても、答えを急がせなくて大丈夫です。

「まだ分からない」という返事なら、今の話をもう少し聞く。「案も聞きたいけれど、先に経緯を話したい」という返事なら、その順番に合わせる。途中で希望が変わった場合は、確認し直せます。

幹事の相談を続けるなら、意見を求められたときに、「参加者へ送る確認文を一緒に考えるのはどう?」と、具体的な作業の候補を一つ出せます。相手が必要としているのが返信文なら、幹事を辞めるための大きな決断を、こちらから急に持ち込む必要はありません。

案を出して断られたら、「助言を求めたのに聞いてくれない」と受け取らないでください。求められたのは候補であって、提案に従う約束ではありません。合わない条件があるなら、それを聞いて次の案を考えるか、そこで案を出すのをやめるかを相談できます。

手伝うなら、作業を小さく決める

「何でも手伝う」と言うと、できることの範囲が曖昧になります。仮に連絡文の見直しなら、今日中に下書きを読むのか、参加者へ送るところまで引き受けるのか。別の作業ですよね。

聞き手ができるのは文面の確認までなら、「送る相手と金額は私には確認できないけれど、文章の分かりにくいところなら一緒に見られる」と伝えます。できる点を具体的にして、判断や責任まで勝手に受け取らないようにします。

返信文を一緒に考える場合も、本人に代わって送信するとは限りません。誰が連絡するか、本人がどこを最終確認するかを残してください。特にお金や約束を伴う話では、聞いただけの情報で第三者へ連絡しないことが大切です。

本人が「まず聞いてもらえればよかった」と言ったなら、作業を増やさず終えられます。何かを買ったり、調べたりしなければ相談に応えられない、ということではありません。

知らないことは、調べる先と分けて伝える

専門知識が必要な相談で、知っているような返事を作る必要はありません。「その制度については、私には判断できない」と伝えたうえで、公式窓口など確認できる先を一緒に探す選択があります。

ただし、本人が望んでいないのに、相談内容を他の人へ送って確かめるのは避けましょう。紹介先を考えることと、本人の話を第三者へ共有することは別です。共有が必要なら、目的と範囲を本人に確かめ、職場の規程などにも従ってください。

健康状態や病名を、日常の会話から判定することもしません。仕事に関わる悩みなら、「こころの耳」の相談窓口案内で、働く方や家族などを対象とした電話・SNS・メールの相談が案内されています。利用する場合は、対象、受付時間、相談できる範囲、利用規約を現行ページで確認してください。

窓口を紹介したことで、問題が片付いたと決めないこと。相談するかどうか、どの方法を使えるかも、本人の状況に合わせて考える部分です。

まとめ:うまい一言より、何を聞いて何を引き受けるか

『聞く技術 聞いてもらう技術』を楽天で確認する

聞き手にも、自分の話を聞いてもらう側にも関心があるなら、出版社の内容紹介や目次を見て検討してください。相談を受ける資格が得られる本としての紹介ではありません。

日常の相談では、最初から正しい返事を完成させなくても大丈夫です。話せる時間と場所を確かめ、本人の話を聞き、理解が合っているかを確認する。それから、案が欲しいのか、手伝ってほしいことがあるのかを相談できます。

もし途中で、先回りして助言してしまったと気づいたら、「方法の話を急いでしまった。先に聞いてほしいことがあった?」と、相手へ戻す言い方もあります。取り繕うために長い説明を加えるより、続けるか、別の話へ戻るかを確かめるところから始めてください。

一方で、聞き手がずっと無理をしてよいわけではありません。深夜の長電話が続く、約束していない作業まで求められる、自分の生活に支障が出る。そんな場合は、聞ける時間やできることの範囲を伝え、必要なら別の相談先も検討します。相手を大切にすることと、すべてを自分一人で引き受けることは同じではないからです。

会話を終えるときには、引き受けたことがあるかを確かめておきましょう。連絡文を見ると約束したなら、いつ、どの方法で渡してもらうのか。何も引き受けていないなら、そのまま終える。相手が望んでいないのに、翌日から毎日様子を聞き続ける必要まではありません。

相談内容は、雑談の話題やSNSの材料にしないでください。記録が必要な仕事上の相談なら、保存・共有するルールと目的を確かめます。相手から聞いたことを、聞き手の実績や「いい話」として公表するのは、また別の判断が必要です。

名言のように整った一言が出なくても、聞くための返事はできます。「今は話せる」「そこはこう理解した」「案を出してもよい?」「ここまでなら手伝える」。どれも、相手の話と自分の役割を確かめる言葉です。

次に相談されたら、まず一つ、先回りせずに確かめてみてください。相手が話したかったことへ戻れるかどうかを、上手な台詞を言えたかより大切にしたいですね。

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

demoday編集室のアバター demoday編集室 DreamBeliever

人間関係や日々の気持ちを見つめ直すための言葉と考え方を取り上げる編集室です。言葉を引用するときは、出典を確かめて紹介します。

目次