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「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている」。夏目漱石の『坊っちゃん』の書き出しは、教科書や国語の授業で目にした人も多いのではないでしょうか。短い一文なのに、主人公の性格がぱっと伝わってくる、不思議な力のある言葉です。青空文庫の本文を読みながら、この冒頭にこめられた人柄や人との関わり方を、やさしく味わってみますね。
この記事では、青空文庫に収録されている夏目漱石『坊っちゃん』の本文(底本:ちくま日本文学全集 夏目漱石)の第一章の冒頭部分をもとに、『坊っちゃん』の冒頭「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている」について5つのポイントで整理します。後半の、冒頭の一文を人間関係のヒントとして読むときの見方は、この記事の提案です。
※この記事は、2026年10月時点で青空文庫に収録されている夏目漱石『坊っちゃん』の本文(底本:ちくま日本文学全集 夏目漱石)に掲載されている内容をもとにしています。本文の引用は青空文庫の表記にそろえています。作品の読み方は人それぞれで、ここで紹介するのはひとつの見方です。
この記事でわかることは、次のとおりです。
- 坊っちゃんの冒頭 5つのポイント
- 冒頭の一文を人間関係のヒントとして読む
『坊っちゃん』の冒頭はどんな文章?
書き出しの一文
青空文庫の本文は、「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。」という一文から始まります。「小供」は今でいう「子供」のことです。
すぐに続くエピソード
このあとすぐに、「小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。」と、主人公の子どものころの出来事が語られます。冒頭から、主人公の向こう見ずな性格がいきいきと伝わってきます。
語り手は「おれ」
物語は「おれ」という一人称で語られます。自分の失敗をおもしろおかしく話す語り口が、読み手との距離をぐっと近くしてくれます。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 親譲り | 親から受けついだこと |
| 無鉄砲 | あとのことを考えずに行動すること |
| 小供 | 子供 |
| 損ばかりしている | 割に合わないことばかりしている |
坊っちゃんの冒頭 5つのポイント
1. 無鉄砲は親譲り
主人公は、自分の向こう見ずな性格を「親譲り」と言っています。生まれつきの性分だから仕方がない、という少し開き直ったような響きも感じられますね。
2. 二階から飛び降りた理由
飛び降りた理由について、本文では「別段深い理由でもない」と書かれています。同級生に「そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。」とはやされたから、というのです。
3. 父とのやりとり
腰を抜かして帰ってきた主人公に、おやじが「二階ぐらいから飛び降りて腰を抜かす奴があるか」と言うと、主人公は「この次は抜かさずに飛んで見せます」と答えます。まったく反省していないところが、なんともおかしい場面です。
4. ナイフの話も続く
続く段落では、西洋製のナイフを見せていたら「切れそうもない」と言われ、自分の親指を切ってみせたという話も語られます。挑発されると引っこみがつかなくなる性格が、くり返し描かれています。
5. 冒頭が物語全体につながる
のちに四国の中学校へ数学の教師として行く話を即座に引き受けたときも、本文では「これも親譲りの無鉄砲が祟ったのである。」と書かれています。冒頭の言葉が、物語の流れの中でもう一度顔を出すんですね。
5つのポイント早見表
| ポイント | 青空文庫に収録されている夏目漱石『坊っちゃん』の本文(底本:ちくま日本文学全集 夏目漱石)の案内 |
|---|---|
| 無鉄砲は親譲り | 性分を親譲りと語る |
| 二階から飛び降りた理由 | 弱虫とはやされて |
| 父とのやりとり | この次は抜かさずに |
| ナイフの話も続く | 挑発に乗ってしまう |
| 冒頭が物語全体につながる | 冒頭の言葉がまた出てくる |
冒頭の本文を読んでみよう
一文目
「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。」性格と、それによって損をしてきたという結果が、一文の中にぎゅっとまとめられています。
二文目から
「小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。」と続きます。読む人の疑問を先回りして答える語り方が、テンポのよさを生んでいます。
段落の終わり
「この次は抜かさずに飛んで見せますと答えた。」で最初の段落は終わります。失敗しても懲りない主人公の姿が、最初の段落だけでくっきりと浮かび上がります。
主人公の人柄が見えるところ
まっすぐで正直
主人公は、思ったことをそのまま口にし、言われたことをそのまま行動に移します。不器用ですが、うそをつかないまっすぐさがあります。
負けず嫌い
「弱虫」と言われて黙っていられない、「切れそうもない」と言われて試してみせる。負けず嫌いな性格が、損をする原因にもなっています。
自分の失敗を笑って話せる
自分の失敗を隠さず、さらりと語ってしまうところに、どこか憎めない魅力があります。読者が主人公を応援したくなるのは、この正直さのおかげかもしれません。
損をしても曲げない
本文には、人に隠れて自分だけ得をするのが大嫌いだという主人公の気持ちも書かれています。損をしてでも、自分の筋を通そうとする人なんですね。
主人公をかわいがった清の存在
清はどんな人?
第一章には、家に長く仕えている「清」という女性が登場します。家族の中でなかなか認めてもらえない主人公を、清はとてもかわいがりました。
清の言葉
清は主人公のことを「坊っちゃん」と呼び、まっすぐでよい気性だとほめてくれます。主人公自身はその理由がよくわからず、不思議に思っている様子が描かれています。
人を見てくれる人
まわりから「乱暴者」と見られていても、その人のよいところを見つけてくれる人がいる。清の存在は、人間関係の中で支えてくれる人のありがたさを感じさせてくれます。
冒頭の一文を人間関係のヒントとして読む
ここからは、青空文庫に収録されている夏目漱石『坊っちゃん』の本文(底本:ちくま日本文学全集 夏目漱石)の案内をもとにした、この記事の提案です。
自分の性分を知っておく
主人公は自分の無鉄砲さをよく知っています。自分のくせを知っておくと、「今、挑発に乗りそうになっているな」と一歩立ち止まるきっかけになるかもしれません。
はやし立てる側にならない
二階から飛び降りたきっかけは、同級生の冗談でした。軽い気持ちのひと言が、相手を危ない行動に追いこむこともある、と考えさせられます。
損をしても大切にしたいもの
主人公は損ばかりしていますが、うそをつかない、人に隠れて得をしないという自分の筋を大切にしています。何を大切にしたいかを考えるヒントにもなりそうです。
見てくれる人を大切に
清のように、自分のよいところを見てくれる人は大切な存在です。身近な人にありがとうを伝えるきっかけにしてみてくださいね。
冒頭を味わうための読み方のコツ
声に出して読む
『坊っちゃん』の文章は、声に出して読むとリズムのよさがよくわかります。冒頭の段落だけでも、ゆっくり音読してみると、主人公の口調が耳に残ります。
言葉の意味を調べる
「無闇」「囃す」「小使」など、今はあまり使わない言葉も出てきます。意味を調べながら読むと、当時の暮らしの様子も見えてきます。
第一章だけでも
長い物語を読むのが大変な人は、まず第一章だけ読んでみるのもおすすめです。主人公の生い立ちと清との関係がわかり、続きを読みたくなるかもしれません。
『坊っちゃん』はどんな作品?
発表された時期
『坊っちゃん』は、明治39年(1906年)に雑誌『ホトトギス』で発表された夏目漱石の小説として知られています。漱石の作品の中でも、特に親しみやすい一作として読みつがれています。
物語のあらすじ
東京で育った主人公が、四国の中学校に数学の教師として赴任し、学校の先生たちや生徒たちとぶつかりながら、自分の正しいと思う道を進んでいく物語です。
舞台のモデル
漱石が愛媛県の松山で教師をしていた経験が、作品の背景になっていると紹介されることが多いです。ただし、物語の中では地名ははっきり書かれていません。
あだ名の登場人物
「山嵐」「赤シャツ」「うらなり」など、主人公がつけたあだ名で呼ばれる人物がたくさん登場します。人を見る主人公の目線が、あだ名にもよく表れています。
冒頭の書き出しが印象に残る理由
結論から話している
冒頭の一文は、「損ばかりしている」という結論から始まっています。そのあとに具体的なエピソードが続くので、読み手は「どんな損をしたの?」と自然に読み進めたくなります。
短い文が続くテンポ
「別段深い理由でもない。」のように、短く言い切る文が重なっていきます。主人公のせっかちでさっぱりした性格が、文章のリズムにも表れているようです。
自分をからかう語り口
失敗談をまじめに反省するのではなく、どこかおかしみを込めて語っています。だからこそ読み手は、主人公を身近な人のように感じられるのかもしれません。
よくある質問
冒頭の一文は?
青空文庫の本文では「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。」と書かれています。
「小供」とは?
今でいう「子供」のことです。
主人公はなぜ二階から飛び降りたの?
本文では、同級生に「弱虫やーい」とはやされたから、と書かれています。
飛び降りたあと父に何と言った?
「この次は抜かさずに飛んで見せます」と答えた、と書かれています。
「無鉄砲」とはどういう意味?
あとのことを考えずに、むやみに行動することをいう言葉です。
「親譲りの無鉄砲」は冒頭以外にも出てくる?
四国の中学校へ行く話を引き受けた場面で、「これも親譲りの無鉄砲が祟ったのである。」と書かれています。
青空文庫で読める?
はい。青空文庫に『坊っちゃん』が収録されていて、インターネットで読むことができます。
清はどんな人として描かれている?
家に長く仕えている女性で、まわりから認められにくい主人公をかわいがり、まっすぐな気性をほめてくれる人として描かれています。
冒頭だけでも作品の雰囲気はわかる?
最初の数段落だけでも、主人公の性格や語り口がよく伝わってきます。気になったら、第一章を通して読んでみてください。
坊っちゃんの冒頭は、主人公のまっすぐな人柄を伝える一文
『坊っちゃん』の冒頭「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている」は、主人公の向こう見ずで負けず嫌いな性格を、一文でみごとに伝えています。二階から飛び降りた話やナイフの話、そして清とのつながりを知ると、損をしても筋を通す主人公の魅力がより感じられます。ぜひ本文を声に出して味わってみてくださいね。